股関節炎の愛犬にお灸をしてみる~その効能と注意点など

お灸をしながら寝る愛犬

愛犬(ゴールデンレトリーバー7歳♂)が関節炎になり、一時歩けなくなってしまいました。痛み止めで大分落ち着いたものの、以前のように長い時間は散歩に行けず。何か飼い主でも治療できることはないか、とお灸をはじめました。

これからの寒い時期、お灸はメリットがいっぱい!ただ、気を付けなければならない部分もあるので、ご紹介したいと思います。

目次

お灸とは

お灸とは

灸は、ヨモギを加工した「モグサ」を皮膚・組織上に置いて、点火して温熱刺激を与える治療法です。

皮膚上に、人為的に軽い火傷を作ることで、直下の免疫システムを活性化させて、火傷と一緒に病的症状も取り去ってもらう、というメカニズムです。温まるので、血行も促進され、患部の修復と栄養に働きます

ひろ・サン

松尾芭蕉の『奥の細道』冒頭にも出てきますね

お灸の種類

一般的なお灸は、大まかに分けると3つの種類があります。

ひろ

大まかなお灸の種類です

①直接灸…指でモグサをひねって作ります。皮膚上に直接置いて、線香で点火します。

②棒灸…和紙でモグサを太い棒状に巻いたものに点火し、皮膚に近づけて温めます。

③台座灸…小さい円筒状のモグサが台座の上に載っており、台座の底はシールになっています。

①直接灸】は、自由に好きな形/硬さに調節できるため、全てのツボに思い通りに施灸できます。一番基本的な施灸方法といえます。しかし、灸師でない方が、モグサを適切な形に作るのには慣れが必要です。

昔、この方法でおばあちゃんがデッカいお灸を据えていましたね。皮膚に直接施灸するので、一番熱さを感じやすいです。指で火を途中で消すこともできるので、熱さ調節も便利です。

②棒灸】は、とにかく気持ちいい温かさ。ツボ一点集中というより、大きく身体全体の経絡(ツボのルート)を温められます。しかし、大きいだけに煙と匂いは結構なもの。室内でやったら、匂いが抜けるまで結構かかります。

③台座灸】は、一番手軽なワンタッチタイプ。モグサに点火して皮膚にポンと置くだけなので、灸師でなくても簡単にできます。しかし、燃えるモグサの部分は大きく、指でつかむ台座部分も小さいので、正直つかみやすいとは言えないです。

途中で熱くなり取り外したい場合に、焦って失敗すると、火のついたモグサが落ちて火傷をする可能性があります。

皮膚上に張るシール部分は強力ですが、動物にやる場合はおすすめしません。毛があるので、人間の皮膚のように張れません。身体も曲線が多いですし、動いたりすれば大変危険です。

皮膚とモグサの間に厚い台座があるので、熱さはマイルドで気持ちいいです。

ひろ

人間への施灸であれば、「台座灸」が簡単でおすすめです。

今回は、①の直接灸で行います。

お灸の効能

サン

良いことたくさん

神経/内臓を調整します…刺激内容によって、神経機能を興奮/鎮静に働きます。

血の流れ/量を誘導します…遠隔的に灸することで、血流を誘導し、血量を調整します。

鎮痛の効果があります…脳内モルヒネ様物質を発生させ痛みを緩和し、脳から降りて来る痛みの伝達を抑制します。

免疫機能を活性化させます…施灸直後から白血球が増加し、病的組織の再構築に働きます。

精油成分でリラックスします…ヨモギに含有されている「チネオール(精油)」に薬効があり、気持ちも安らぎます。

灸の注意点

なんといっても「火傷」です。灸の種類によって、少し異なりますが、モグサの燃焼温度は100℃以上になります。皮膚で感じている温度は約40~80℃くらいです。皮膚にもぐさが触れる直接灸は、当然、感知する温度が高くなり、皮膚ともぐさの間に干渉するものがある台座灸は低いです。

直接灸】は、モグサが小さいので大きい火傷をすることはまずありませんが、火を消すタイミングが遅い/大きくモグサをを作ってしまった、などの場合、皮膚に跡が残る火傷の可能性があります。

棒灸】は点火している部分が太いですが(ドデかい線香のような感じ)、皮膚に近づけすぎなければ安全です。

台座灸】は、モグサが大きめなので、途中で外す際にうっかり落とすと大変危険です。また、消火後も気持ちいい温かさが続くので、外さずそのままにしておくと、低温火傷をする可能性もあります。

他の注意点として、「灸あたり」があります。以下に述べます。

また、灸師でない限り、原則「灸をしてはいけないところ/病」があります。例えば、急性患部外傷部発熱部位大きい血管や神経があるところ粘膜極端な虚弱体質消耗性疾患や糖尿病などの傷跡が治りにくい病などです。

ひろ

初回は、刺激がごく弱めのものを、少しだけやって様子をみます

灸あたり(瞑眩現象)について

(人間の場合ですが)お灸にも副反応が出る場合があります。「灸あたり」です。軽度な物なら『瞑眩(めんげん)症状』といって、病的症状が好転するときに現れるものとして、心配はいりません。

ごくごく稀に発熱したり、嘔吐感が出現する場合もないとはいえません。灸だけでここまでの症状が出ることはまずないといっていいですが、以下のような場合は注意が必要です。

ひろ

こんな時は「灸あたり」が出やすいかも

・睡眠不足が続いている

・食事を充分にとらない日が続いている

・体力的/精神的に極度に疲労している

・虚弱体質

・過剰なほどデリケート

・年齢(子供/老年)

・病が深刻

・灸に対して恐怖心

                    ※ 施灸前後の大食/飲酒/運動/長風呂も避けます。

施術風景

お灸セット
   愛犬のお灸セットです

写真の左下が「モグサ(燃える草の意)」です。ヨモギの葉の裏につく、ふわふわした毛だけで生成されます。左上の丸いシールは『灸点紙』といいます。裏がシール状になっており、その上にモグサを据えます。

皮膚との緩衝材になるので、熱すぎや火傷を防ぎます。私は人間には使いませんが、犬の皮膚は人間より薄く柔らかく、デリケートなので、これを使用します。

人間と違って毛が多いので、シールがうまく皮膚上にくっつかず、取れやすいので注意が必要でした。

サン

お灸の流れ

①愛犬の毛をかき分けて皮膚を露出

②灸点シールをツボにペタ

③シールの真ん中(銀色の部分)にもぐさを据える(三角錐の形がベスト)

④火のついた線香で点火

⑤燃え切るかな~というところで消火する(大きさにより調整)

直接灸」の灸の作り方を簡単にご紹介します。

モグサを少し人差し指の
第一関節に置く
お灸の作り方1
親指をそっとかぶせる。
その状態でごく優しく
人差し指だけを上下に動かしてモグサを細長く整える。
親指は動かさない。
空気を含む感じで。絶対に力を加えて潰さないこと。
(写真は、人差し指が上への動き)
お灸の作り方2
(人差し指が下への動き)お灸の作り方3
だんだん、細く長く
なってきた
お灸の作り方4
良い感じの大きさの
(できれば三角錐)に
ひねり出てきたら、
左手でちぎり取る
お灸の作り方5

上記のように灸を作ったら、灸点紙に置いて線香で点火します。(灸の底面をちょっと湿らすと落ちない)

毛をかきわけてお灸をセットする写真
①毛をかきわけ設置
お灸に線香で火をつける写真
②線香で火をつけ
燃えていくもぐさの写真
③GO!

今回は、愛犬の股関節炎のための施灸なので、腰椎~股関節~ふくらはぎあたりを中心に行います。

温かさを感じるくらいでないと効果も薄れるので、もぐさの大きさと硬さを試行錯誤します。初めはふんわりと、お米一粒の半分くらいで作りました。

直接灸ですと、燃焼時間はほんの一瞬。点火してから燃え切るまで、5秒以内です。火がシールに到着する寸前に消火します。(指でポンと潰すだけで消火できます)

愛犬サンは多少神経質なので、温かくなれば何かしらの反応がありそうなのに、全くの無反応。刺激が弱すぎるかもしれません。米一粒の大きさにして、もぐさも硬めに作ります。再度、いざ!

やはり無反応ですが、私が自分にやってみると、まずまずの温かさ、むしろちょっと熱いくらい。調子に乗らず、この辺で様子をみることにします。同じ個所に2~3壮ずつ、3~5ヶ所程度のツボに据えています。

自分の身体にのっているお灸を見つめる愛犬
なんか載ってますね…

サンは足を悪くしてから、鍼灸を始めて大分回復しました。30分の散歩で休憩を2~3回していたところが、1時間に休憩ナシまでに回復しました。鍼をまず2週間、先行してやっているので、回復には鍼の力が大分大きかったと思います。

が、灸は鍼とは違う効能や気持ちよさがありますので、『このツボ/症状には鍼よりも灸の方が効果がある』というケースもたくさんあるのです。

私は、気(パワー、エネルギー)や血の流れが悪そうなところ、刺激したいが鍼が刺しずらいところに重点的に灸をしています。

お灸中寝てしまう愛犬
お灸を始めると、すぐにスヤスヤと…

【愛犬への鍼施術】

最後に

お灸が少しブームになったこともあって、何となく興味がある方もいらっしゃるかもしれませんね。お灸は免疫システムを目覚めさせ、活性化させる効果があります。

よほど強刺激でない限り、副作用もまずありませんので、火傷さえ気を付ければ最高の民間療法です。

私は愛犬が足をくじいたことがきっかけで、愛犬に灸を始めて3週間ほどですが、足に関していえば確実に良くなっているといえます。鍼も行っていますが、東洋医学的には、鍼で「邪気(悪いもの)」を取り去り、灸で「生気(良いエネルギー)」を取り入れるイメージです。

「鍼灸」といえば、鍼の方が治療効果が高いイメージがあるかもしれません。しかし、灸は、鍼では補えない部分を補填し、「この症状/ツボには灸の方が効く」ということも多いのです。

興味のある方に参考になれば、とても嬉しいです。

最後に…、江戸時代の著名な儒学者・薬学者であった貝原益軒は、当時85歳という長寿でしたが、灸についてこう説明しています。

サン

「養生訓」という、日々の養生書を著しました。
現代語訳版もあり、とても面白いですよ♪

『人間は自然環境からの陽気を受けて生きているが、この陽気が足りなくなると、陰陽のバランスが崩れ、病気になる。灸は陽気を補充して気血を活発にし、胃腸を丈夫にし、免疫を向上させる効果がある(意訳です)。』

ひろ

やはり良いものって廃れないんでしょうね

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